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レーザー治療、睡眠時無呼吸症候群

blog ナゴブロ 院長ブログ

さよならウィリー

2021/01/15

医療を生業としていると、患者さんの健康に寄り添うことで感謝されたり達成感を感じることが多々あります。
しかし宿命的に、患者さんにとって辛いお別れの場面をご一緒することもあります。
命は永遠ではなく、儚いものです。だからこそ命のきらめきは貴重で、それを愛おしむことが大切です。
私は14年前に実父を、4年前に義父を亡くしました。父たちは戦中派の男で日本の発展に寄与した世代。家族に恵まれ素晴らしい人生でした。送った時、悲しみはありましたが納得してお別れができました。
親を含めいろいろなお別れを経験して、自分の医師としての立ち位置が定まりました。

お正月明けに、愛犬ウィリーを亡くしました。
大切な大切な家族でした。
この3月に12歳になるはずだったウィリー。
今、ペットの寿命が延びているので少し早いお別れでした。

昭和の団地住まいだった子供の頃、ペットは飼えませんでした。
両親とともに郊外に引っ越した後も、うちにペットはいませんでした。
社会人になり結婚し、クリニックを開業して今の住まいに越し、そして運命によりウィリーと出逢いました。
名付け親は息子君。めっちゃハンサムなノーフォーク・テリア。僕が飼ったはじめてのワンワンでした。
お散歩大好きで、朝は僕が担当。休日は隣り駅までは当たり前。僕をグイグイ引っ張って丘を越え川を渡り、好奇心の強い子でした。

昔、外国の漫画「タンタンの冒険」が好きでした。髪の毛をタンタンカットにしていた時もあります。あまり似合いませんでしたが笑。
主人公タンタンの相棒は愛犬スノーウィ。サイドカーで一緒に旅をして、悪い奴をやっつける頼りになる相棒。そんな冒険を空想していた少年が大人になり、ついに手に入れた相方でした。

子供もいるいい大人がそんな呑気なことばかりは出来ませんよね。しかし子供が中学生になり部活に夢中になると、ウィリーとの冒険の時間がやってきました。サイドカーではなくオートバイで。

若い頃むしろ敬遠していたバイクに乗り始めたきっかけは、東北の大地震。
復興支援を通じて災害医療が自分のテーマに加わりました。
瓦礫と漂流物で道路が障害された宮城での経験から、バイクの機動力に気がつきました。これは活用しないと。
遅ればせながら二輪免許を取り、思考錯誤していく中で、バイクが平常時も生活を豊かに便利にしてくれる物だとわかってきました。

そんなある日曜日、いそいそとプチ・ツーリングに行こうと準備していると、ウィリーと目が合いました。
「パパ、遊ぶ約束したよね。また一人でバイクででかけるの?」くりくりの目が言います。
「えーっと。ちょっと出かけるんだけど。・・じゃあ一緒に行く?だけどママには内緒だぞ」
そこからウィリーとの冒険の旅は始まりました。

あかちゃん用のスリングに入れて出発!専用のリュックを買ったり、バイクの後ろにカゴを固定したり。カッコいいサングラスがお似合いで、いつも大人しくついて来てくれました。
だいたい行き先は湘南。時々伊豆や千葉。

悪い奴はやっつけませんでしたが、ビーチでのんびり、旅先でのお散歩が大好きでした。ワンワン同伴だと高いお店は入れませんが、テラス席や公園のベンチで美味しいものを一緒に食べました。
ビーチでは沢山のワンワンと挨拶しました。大型犬も小型犬も、みんな大好きおともだち。
水は、、、苦手でした。はじめて海に来た時、大はしゃぎで海に飛び込んだけど、びっくり!固まってしまい、ゆーっくり後ずさりで戻ってきたヘタレ君でした笑。

定宿ではいつもお気に入りのラグで寝て、朝早くから1時間以上お散歩。地元でも旅先でも「可愛い」と言われるとご機嫌でした。

10歳を超えた頃から抱っこの時の頻脈が気になり、健康診断で心雑音を指摘されました。
日大獣医病院を紹介され、診断は僧帽弁閉鎖不全症でした。小型犬に多いそうです。
獣医さんにお薬を処方され、毎日嫌がらずに飲んでいました。

そして運命の日。前日は夕方のお散歩も普通に行って、30分以上元気に歩きました。普通に自分の好きなご近所の知り合いの所に行くと言って僕を引っ張って歩きました。
次の早朝に「ウィリーが苦しそうに咳をしている」家族が僕を起こしました。見にいくと息苦しそうです。心配して添い寝をするとだんだん良くなりますが、20分位でまた咳発作が起きます。だんだん悪くなって薄いピンクの痰が出ました。これは肺水腫を起こしているのかもと心配になり、獣医救急の受診の準備を始めました。
その最中に、、いきなりウィリーが痙攣発作を起こしました。
家族もびっくりしてうろたえています。
ええ!、呼吸が止まり、、、尿失禁してしまいました。
痰が気道を塞いだかも!、と胸を押したりのどをストローで吸っても呼吸は再開しません。
急いでタオルに包んだウィリーを車に乗せ、新横浜の救急病院に運びました。
ウィリーがんばれ!ウィリーがんばれ!
駆け込んだ病院ではスタッフの皆さんが待っていてくれて、緊急蘇生をしていただきました。
大学卒業後、横浜市大病院での救命救急センターでの研修医の時のような緊張感と慌ただしい処置。
しかし、ウィリーの目が開くことはありませんでした。

21年正月、ウィリーは星になりました。
僕たちにたくさんの楽しい思い出と深い悲しみを残して。
家族全員で落ち込んでいます。
父を送った時とは違う感覚。
大切な大切な家族でした。
朝顔を見ると全力でしっぽを振り、帰宅すると一直線に走ってきて顔をペロペロする姿はもうありません。お散歩ではご機嫌で町中の友達にあいさつ。一緒にたくさん冒険したね。
また会いたいよ、ウィリー。寂しい。

喪失感が大きいけど、楽しい思い出をたくさん集めて埋めていくしかありません。きっとそれをウィリーも望んでいるでしょう。

新型コロナウィルスの感染拡大が危惧されている今、お年寄りや基礎疾患のある方々の健康状態は気になります。人間でも動物でも、健康管理には十分に気をつけて下さい。
周りには10歳を超えるワンワンを飼っている知り合いが多いです。
全ての生きるものに訪れる「その日」のために、毎日毎日を大切に過ごして頂きたいと思っています。