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真夏の巡礼

2017/07/12

6年制の男子校。背伸びをしてとんがっていることで認められたい頃。興味の対象は音楽、映画、小説やスポーツでした(もちろん女の子も!)。聞きかじりの政治や宗教の話を大人っぽく話すことで自分の存在が認められた気がした日々。先輩からの情報は無条件に価値があり、「すごいもの」でした。
その一つにブリティッシュロックバンド、ウィッシュボーン・アッシュがありました。彼らの隠れた名曲が「巡礼」です。初めて聴いた14歳の僕には衝撃でした。ツインリードギター、無機質な情念のリフレイン。複雑な構成の曲であり、ギターのリフのかっこよさったら!
そもそも「巡礼」という言葉が、まず憧れにも似た大人の世界の響きでした。深い信仰と、赦しを求める控えめで一途な気持ち、そして旅愁。無宗教の毎日の中で子供には無縁な世界。それはまだ見ぬ宗教学的アイコンであり、哲学的好奇心の導火線でした。
アッシュの「巡礼」は、音楽活動を始めたばかりの中高生達には高いハードルでしたが、果敢に挑む友人もいました。若き無謀な挑戦。僕らの毎日はまさにそんな哀しい野望に溢れていました。見えないゴール。届かない想い。ショボくてうっすぺらで、だけど脱ぎ捨てられないプライド。まったくアオハルってやつは厄介過ぎる笑。

時ははるかに廻り、僕は先週、夏の東北で小さな巡礼を行いました。
振り返ると僕は典型的日本人。宗教的行動は葬儀程度で、神社仏閣に伺うのはほぼ観光目的もしくは好奇心。幸せにはなりたいけど、その根底に信仰はない。
そんな僕が神を意識したことは2回あります。
若きバックパッカーの頃。初めての国、初めての街。訪れた土地でマストに行く場所は大聖堂、大寺院でした。物見遊山のお約束も、数を重ねると敬虔な信仰心のようになってきます。キリスト教の国、イスラムの国、ヒンズーの国、仏教の国。町々の大寺院で僕は神を探しました。人々の祈りの場所、そこには神が宿っているんじゃないか。今、そこに神様がいなくても、昔神様がいたはず。そんな場所を探し続けた先にきっと神様がいるんじゃないか。熱に浮かされたようにただ神様だけを探し続けた不思議な旅がありました。
そして2011年。大震災の後、日常診療に苦闘しながらも古き友と合流して北へ向かいました。そこで目にしたものは大きな悲しみと力強い共生。何か大きな力に導かれるように細い道を歩き、新しい仲間と出逢いました。大変だけど充実した物語。そして得た安らぎ。慈しみを与えてくれたのは神様だったんだと今思います。

あれから6年の時が過ぎ、静まった火照りを心の底に、いつもの相棒との小さな巡礼の旅。
大事な仲間と合流した後、仙台・塩釜で東北の復活を味覚で確認し、約束の地・女川へ伺いました。
嬉しい再会が2つ。2年前に女川に移り住んだ僕の患者さんは、相変わらず素敵な笑顔で迎えてくれました。もうすっかり街の大事なメンバーになっていた彼女の落ち着きにとても癒された気持ちになりました。
そしてもう一人。2回目のサマーキャンプに参加してくれた頑張り屋さんは、高校3年生になっていました。女川中学の29年度の「先輩の話を聞く会」のスピーカーに選ばれて打ち合わせに来ていた彼女との再会は、この旅での一番の喜びでした。(8人のスピーカーのうち、何と3人がキャンプOGでした!)すっかり大人っぽくなった彼女から進路や将来のことを聞いた時、僕はどんなに幸せだったことでしょう。

巡礼。宗教や風習によってやり方は違うけれど、信じるもの聖なるものを巡る旅。
50を超えてなお、信じるものが定まりきれていないけれど、大事なものは決まってきました。仁や大儀よりも、恩や信義、家族や仲間がその根底にあります。
そうした大切なもの、そしてそこにいたかもしれない神様を敬う旅を続けながら、これからも自分と世界のつながりを考えていきたいと思っています。


塩釜のすし哲さんのほや、美味し!



女川中の図書室でびっくり



大切な患者さんと再会



Tamamiちゃん、大人になったね